夢のなかでだけ、ジョエルは声を出すことができました。夢の中の広いステージでは、
おおぜいのファンをまえにして大好きな歌を歌うのでした。でも目が覚めるとジョエル
はいつも悲しくなりました。
「夢をあきらめてはだめよ。夢を持ちつづければきっとかなうのだから」お母さんは
ジョエルに言いました。
そこでジョエルは夢の中で歌う歌を自分で作りはじめました。とりわけ、お父さん、
お母さんと出かける日曜日のたいくつな列車の中は、ジョエルが歌を作るにはもって
こいの時間でした。そして1か月もたつとジョエルの背中のバッグには50曲をこえる
楽譜がたまっていました。
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